バランスオーディオラインのモニター用ヘッドホン変換トランス


業務用のバランスオーディオラインの音をヘッドホンで聴くために、わざわざヘッドホンアンプを用意しなくともトランスを用いて
鳴らしてしまおうという機器です。例えば-20dBFs+4dBuのラインなら最大12Vとかで600Ω回線をドライブできる能力があるわ
けですから、本来ヘッドホンを鳴らすくらい余裕なはずです。
なお、聴感上の音質も良く、実用度バッチリに完成したのですが回路的にもう少し良い案がないかと考えています。
以下の記事をもとに良いアイディアがあれば教えてください。

※写真撮影時ではアースラインを結線していませんでしたが、最終的にはヘッドホン出力のGND、XLR端子のpin1およびフレーム、
トランスのフレーム部分、シャーシをアースラインとして結線しています。



■使用トランス 染谷電子A41-107 600Ω:50Ω




上記はメーカー資料です。
一次側はバランスラインにあわせて600Ω、二次側はヘッドホンを接続するということで50Ωに設定し、設計・製造してもらいました。



■アッテネータ部

アッテネータの回路がこの機器を作るにあたっての難関となります。
音質・特性の劣化やボリューム位置での変化を最小限にすべく何度も試聴を繰り返しました。
度重なるテストの結果、二次側にΠ型アッテネータを組むことにしました。
できるものなら可変抵抗を用いたいところですが電力を扱うことと回路前後のインピーダンスの変化を
抑えたいという観点からロータリースイッチを用いました。

使用したのは東京測定器材(TOSOKU)のRS700-4-4-11-A-E-30-20-Rで
4段4回路11接点エポキシノンショーティング30°20mmシャフト丸型となります。


アッテネータ抵抗の定数は以下の通り

50Ωで3dBステップのΠ形アッテネータとして設計しましたが、トランスの二次側はアッテネータの後に
47Ω抵抗を通した後にヘッドホン出力としています。
というわけで実際は前後段でマッチングをとることはできません。そもそもラインの機器の
出力インピーダンスも実際は600Ωよりは小さい値が一般的ですし、ヘッドホンのインピーダンスも
物によりまちまちなので完全にマッチングをとることは原理的にも不可能ですし意味もないことなのですが
いまいちこのあたりがスマートでない部分は気になっているのですが、音質面ではうまく収まっているため
これで良しとしました。

※最終的には-30dBポジションは実装せず、ミュートとしました。



■周波数特性

周波数特性についてはソースのインピーダンス、アッテネータの位置、負荷となるヘッドホンのインピーダンス
に影響されます。そこでいくつかのパターンで測定を行なってみました。




ボリューム最大(アッテネータ無し、47Ω直列抵抗のみ)、ソースインピーダンス40Ω



ソースインピーダンスは基本的に低いほど良い特性が出やすくなります。
低域は10Hzにおいてもほぼ減衰はなく、高域も20Hzあたりまでほぼフラットです。
無負荷および32Ω負荷にて測定していますので、この二つのデータより実使用時の特性が予測できると思います。




ボリューム最小、ソースインピーダンス40Ω



アッテネータを挟んだ場合の特性です。
アッテネータによって対GNDで抵抗が入っているため無負荷時の高域の不必要な持ち上がりが
無くなっています。

※いま思えばATT0dB時に対GNDで1KΩとか抵抗いれておけば良かったかも。




続いて、ソースのインピーダンスが600Ω(想定される最大値)の場合で測定してみました。

ボリューム最大時



予想通り低域において若干のレベル低下がみられます。ただし20Hzで-2dB未満ですので問題の無い範囲では
あるでしょう。実際、ソースのインピーダンスが600Ωということもほとんどありませんので、実使用でここまで
落ちることはないでしょう。



ボリューム最小時



こちらも全く問題無い範囲に収まっていました。


以上、回線のチェック用のみならず、レコーディングやミックスのモニター用としても使用できる
位のスペックに仕上がったと思います。



使用ケースはタカチCD-90BBです。

トランス取り付け部のLアングルの加工寸法のメモがたまたま残っていたので載せておきます。






■参考情報

実はこの機器を作ろうとした最初の段階ではひと回り大きなトランスにしていたのですが、
使い勝手の都合上、コアサイズを1ランク下げた経緯があります。(コア横幅48mm→41mm)
どちらも実用上では全く問題ないものの、比較すると当初のトランスのほうが低域が良く出ていました。
参考までにそのトランスのデータも掲載しておきます。


A48-123 メーカー資料



特性比較


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